
2005年8月10日、愛・地球博/ささしまサテライト会場内のプラネタリウムで行なわれた、
バンプ・オブ・チキンとプラネタリウム・クリエイター大平貴之のコラボレートによる
一夜限りのスペシャル・ライヴ―――その終演後の楽屋、
大平貴之との対談後に語り合った、4人とのdiscord。
※写真は升の誕生会で上がりまくりの3人(主役不在でごめんなさい)。
●今日のライヴは「素晴らしくバンプ・オブ・チキンなライヴ」だったわけですが、明らかに今までとは違うアコースティックな手法を取ったわけで。まずはそのへんのみんなの感想を聞かせてください。
藤原基央「アコースティック・スタイル………もともと曲ってそういものですからね。和音があってリズムがあってメロディがあれば、それで音楽は成り立つものであって。“プラネタリウム”を作った時は、まず最初に弾き語りで僕がデモテープを作ったんですが、その段階で完成してた感があって。で、それをバンドで是非やってみたくてやったわけですが、だからこそ、すでに完成しているものをさらにバンドという形の完成形に持って行くにはどうしたらいいか?というところで、バンドは凄く悩んだわけです。まぁ悩んだと言うか、そこが楽しかったんですけど(笑)。要するに、今日はその最初の形に戻ったっていうことだったんだと思います、だからそんなに難しいことじゃなかった」
増川弘明「本当に楽しいなと思ったんですね。曲が伝わる最もシンプルな形で演奏するっていう楽しさもあるし、もちろん単純にいつもと違うことをやる楽しさもあるし。初めての体験……まぁ初めてではないけど、ここまでちゃんとアコースティックでやるのは初めてだったし」
●飾りが最もないアコースティック・スタイルで、自分達を曝け出す出すことは、凄く緊張感も伴うと思うんですね。それについては、練習から今日のライヴまで含めてどうでした?
増川「もし練習が自分の中で満足の行くものではなかったら緊張ももっとあったと思うんですけど、早い段階から形が見えてた(曲や)部分が多かったので、緊張はそんなにはなかったですね。まぁおこがましいですけど、気持ちよくやらせてもらいました」
升秀夫「いつも僕らは『歌を伝えたい、歌を伝えたい』って言ってて、その通りにやってるんですけど、今日のスタイルは本当にいつも以上にその根本を、骨の部分を浮き立たせる結果になったんじゃないかなと思います。特にお客さんを前にしてやってみると、その感じはより強まりましたね。ドラムとしては気持ちよくできたのと、あとやっぱりいつもとやり方ってものが違ったので勉強にもなったし。今回やったのはある一つの形だと思うんですけど、まだもっといろんな形があると思うし。楽曲のいろんな側面っていうものが見れたので、凄く勉強になりました」
●ちゃまは遂にウッド・ベースを弾いたわけですが。
直井由文「そうですね、まだまだですけど(笑)。それよりも何よりも、さっき藤くんが言ったようにウチのバンドは弾き語りで歌える曲が多いので、それがやっと表現できた――前の4人だったらできなかったと思うから。それの(バンドが一皮剥けた)初めに触れられたことが凄い嬉しい。精神的なベクトルでも、昔の俺らだったらこういうコラボレーションはできなかったかもしれないし。やっぱりいろんな巡り会いとか、時間が可能にしたんだと思う」
●藤が言った通り、バンプ・オブ・チキンの楽曲は、楽曲的にはアコースティック・スタイルにハマりがいいものだと思うんですよ。でも、だからこそ、それをやらずにエレクトリックな歪んだ音を出したり、いろんなことをしながら音楽を作ってきた――そういうバンプ・オブ・チキだからこそ、アコースティックに挑むのは橋を渡ったなあと思うんですね。
藤原「それはあるね。きっとあると思います。………作り手と曲の信頼関係っていうのが必ずあると思うんですけど、俺のそれは世界に誇れると思ってるんですよ。自分の曲を信じる、そのレベルの強さっていうのは誰にも負けないんです。それがあったから(こういうことが)できたんじゃないかな。……アコースティック・ライヴって時点で作為的じゃないっすか? その辺は何て答えたらいいかわからないんですけど、でも結局は無意識の部分のほうが強かったと思います。アコースティック・ライヴを決断した時点でそういう決着はもう着いてて、あとは曲を信じることができてるので。俺の曲がどんだけ裸にされても、もともと裸で鳴ってたものがまた違う形の裸で鳴る、違う表情を見せるっていうだけですから」
●その楽曲との信頼関係とメンバーとの信頼関係が、トライアングルで同じ距離になったような感じなのかな? バンプ・オブ・チキンはメンバー同士で凄く長い歴史を築いてきたわけど、今は音楽的にもここまで高まってきた。そういういろんなバランスが整ってきた時期だからこそ、ここまでシンプルに音楽を裸にして行くということができたんじゃないかなあ。
藤原「なるほど。うーん…………今言われて想像してみると、確かに10年前にはできなかったんじゃないかなって思います。人間と同じで、俺ら4人が長い時間をかけて信頼関係を築き上げてきたように、曲との信頼関係を築けるようになるのもやっぱりアーティストの技量だと思うんで。これはいろんなインタヴューでも言ったことがある言葉なんだけど、ちょっとずつ自分達の曲との会話が上手になってきてる。自分らの曲、自分らが出してる音との会話が上手になってきてる。この曲がどういう音を求めてるのか、この曲がどういうふうに響かせてもらいたがってるのか、それを読み取る力と、それから『俺はこういうふうにお前を響かせたいんだ』って曲に伝える力が増してきてて、要するに曲との会話を円滑に、より深いところで交せるようになってる。――ただ信じる気持ちっていうのは昔からフル10です(笑)」
●たとえば今回の“ガラスのブルース”は聴き手にとっては大胆なアレンジで、本当に新しい宝物が生まれたなぁっていうイメージがあったんだけど、あそこに至るまでには相当苦労があったの?
直井「いや、それが……藤くんが『俺は何となくアレンジは考えてあるんだ』って言ってたんだけど、それを実際に鳴らしてくれて、コードを教えてもらって……その日のうちに大体ああいう形になりました。たとえばここでキメ!っていうのも、『あ、ちょっと止めて!』って言って、『じゃあ俺がここで4拍入れてブレイクいくね』っていう感じでやってって。もちろん、いつもと同じで、“プラネタリウム”って曲が生まれて聴かせてもらって、すぐに(ベース・)ラインを思い付いたとしても、すぐには弾けないんですよ。そういう意味では、個人的な練習はこれからもどんどん続けて行かなきゃいけないんですけど、『こう鳴らしてくれ』って芯に触れるのはその日のうちにできたので。たぶん、この中で『(鳴らすべき曲の形が)見えない、見えない』ってなっちゃってた子はいないんじゃないかな。それに藤くん自身が自分で作った曲のコードを変えてやるっていうのは、それは生んだ人がやってることだから俺らには何の不安もないし。もし俺が全部を変えて持ってきたら、それは4人で詰めるべきところがあるんだろうけど――その曲を俺が生んだわけではないから。でも生んだ人がやったことは間違いないと思うんで。そういう信頼関係が、というか藤に対する俺の一方的な信頼が凄くあるので。『こいつがやるんだったら間違いないでしょう』っていう」
藤原「ふふふふふふふふ(照れ笑い)」
直井「だってわかるでしょ、鹿っぺも。下手なことは絶対しないし、そういうの一番嫌いな人だから。…………まぁ俺が“ギルド”で1回コードを変えて非常に申し訳ないことをしたことがあったんで(笑)」
藤原「(笑)サンキュー」
直井「あとは本当にプレイヤーでしかないというか。だからいい意味で、今回のプラネタリウムのライヴでその真価が問われたし、問われた分、今凄く不安に思ってることもたくさんあるし。だから敢えてこういった形でのライヴをもうちょっとやってみたいっていうのもある」
●もっと磨きたい?
直井「磨きたいっす(笑)。音楽をやる人達にとってアコースティック・ライヴって凄い大きなテーマなんじゃないかなって思う。だから、やっとこういうふうに少しでも形にできたのであれば、みんなでもっと磨いて行きたい。今回は大平さんと一緒にやりましたけど、音楽だけなら自分達だけでもできると思うし。だからぜひとも機会があればやりたいし、あとは練習もみんなでやりたいなぁっていう」
●どこでも誰の前でもできるっていうのが、今回のアコースティック・セットの素晴らしさだと思うんですよね。自分達の音楽をどこへでも連れ出して行ってあげるよっていう、凄く素敵な切符をこのバンドは手に入れた気がするんです。
藤原「そうですね、家でギター弾きながら歌ってる、そういうものをお客さんが観てくれるっていうことだと思うんですけど。うん、なるほど納得って気はしますけど、でも僕はそういうところは無自覚でした。ただまぁ、やるんであれば照明(ここでは派手な照明演出やスポットライトのようなことを喩えています)ないところでやりたいなぁと思う(笑)」
●今回はそれがよかったんだ(笑)。
藤原「本っ当によかった(笑)。照明は恥ずかしいです。で、俺ら、アコースティック・ライヴ初めてではないんですよ、実は。ハイライン・レコード(下北沢)ってところで何度かやらさせてもらってるんですけど――」
●あはははは、あれ、何年前だ?
藤原「あれ、もう7年か8年前の話だと思うよ」
直井「俺、最近(ビデオで)観る機会があったんですけど、もう凄いの!(笑)」
升「なんか歌メインっていうよりも、藤原の話メインみたいな(笑)」
直井「っていうかさ、演奏が凄かった。俺ら、いなくてよくない?みたいな」
●ははははははは!
直井「藤原が掻き鳴らして歌ってるだけが一番伝わってるのに……やっぱり歌が一番響く形って、本来は作り手がアコースティック・ギター1本で歌った時だと思うんです。で、バンドっていうのは、それをバンドという形にアレンジして行くものだと思うから、邪魔になってはいけない存在というか、バンドによって歌がよくならないと意味がない。でも当時はもうなんか、邪魔しちゃってるみたいな(笑)。だから今はようやくよくなる要素というか、そういう種みたいなものが生まれたんじゃないかな」
藤原「本当に恥ずかしくってしょうがないんですよ(笑)。2回か3回やったんだけど、俺たしか1回サングラスかけて行ったんだよな(笑)。だから本当に、今回みたいな照明のないところでやりたい(笑)。でも普通はそんなことは成立しないだろうから、だから俺は大平さんのアイディアが凄く嬉しかったんですよ」
●うん。“ガラスのブルース”がね、本当に凄く素晴らしかったんです。一番素晴らしいと思ったのは、一番最後の部分。アコースティックで特殊なアレンジなんだけど、最後のパートは凄くバンド・サウンドだった。で、僕にはもの凄くロックンロールしているように聴こえた。音楽の全部の魂がバンドとして波打っていて、偉そうな言い方で申し訳ないが、『ああ、いいバンドになったなぁ』っと思った。
藤原「ありがとうございます。ありがとう(笑)。“ガラスのブルース”が一番バンド・サウンドになるのはわかってたことなんですよね。というのは、“ガラスのブルース”は今回のためにリアレンジされたものだから。“ギルド”だとか“プラネタリウム”、“emblace”、“スノースマイル”っていう曲達は、リアレンジというよりはそのままやったって言っちゃってもいいんですよ。コードを鳴らして、必要なアルペジオは追っかけてっていう、ただ音がちょっと違うっていう、それくらいのことだと思うんだけど。でも今日の“ガラスのブルース”は、本当にアコースティック・アレンジとして生まれたものなの。だから“ガラスのブルース アコースティック・ヴァージョン”って付けちゃっていいと思う。……俺ね、アコースティック・ヴァージョンって偉そうに付くヤツいろいろあるけど、アコギで弾いただけじゃダメだと思う。だってアコースティック・ヴァージョンがあるってことはその前にエレクトリック・ヴァージョンがあるわけじゃないっすか、バンド・サウンド・ヴァージョンっていうのがね。だから単にアコギで弾いただけでアコースティック・ヴァージョンとか付けるのっておかしいんじゃねえかなって思う。前にも1回“Ever lasting lie”でリアレンジをやってますけど、あれや今回の“ガラスのブルース”くらい違うもの――人間に喩えたら優しい奴がぶち切れた瞬間とか、鬼の目にも涙みたいな、それくらい違うものになってないとリアレンジってことにはならないと思う。…………話を戻しますけど、今回“ガラスのブルース”はこの日のためにリアレンジされたわけだけど、本当にどういう楽器があってどういう竿があってどういう打楽器があって、声を出せる奴が何人いて……っていう制限の中でリアレンジされて行ったものだから。だからあれが一番グルーヴが出るっていうのは当然のことだったんじゃないかと思う。そういうアンサンブルだったからさ」
●増川、「俺らは音を鳴らして行くぞ、歌を歌って行くぞ」っていう覚悟を歌詞にしてまで鳴らしたこの曲を、今になってまた新しいアレンジでもう一度やれるという、その自分達の贅沢な音楽との付き合いみたいなものを感じたりはしませんか?
増川「そうだね(笑)。やっぱり、この形っていうのは一番曲が伝わるというか、曲の最もシンプルな形で。そこで改めてこの曲のよさを感じるっていうのはありますね。まぁ演奏してる側だからもっといろんな気持ちはありますけど、だけど『いいなぁ』って思う。(アレンジを)削って行って悪かったら意味ないし。うん、いい曲だし、いいなって。それは思いましたね」
藤原「“ガラスのブルース”はとりあえず置いておいて、他の曲に関して言うと、他の曲のレコード(=CD)・ヴァージョンがカラー写真だったとしたら、今回のはモノクロ写真だったんじゃないかなって思います。その程度のことなんだろうと思う」
●はははは、よくわかります。
直井「俺がいつも思うのは、俺らがやってるこのバンドは本当にメロディがよくて、本当に詞が伝わる楽曲をやってて。普通にどんな場所でもどんな時でも、俺らの中にその楽曲が生きているからこそ、それを証明できるんだと思う。だからプラネタリウムじゃなくて、たとえばトイレの中でもね――たぶん学校の昼休みのトイレとかで自分の中に鳴ってる人もいるだろうし(笑)。だから、どこでも鳴れるような曲だからこそ、(こういうアレンジやライヴも)できるんだなっていうのを今日は痛感しました」
●わかりました。じゃああえて最後に聞きますけど、升、次はどういう形で何をやろうか?(笑)。
升「じゃあ、宇宙空間で!」
直井「(笑)」
升「まあダンサー5人くらいでね、シャトルも帰ってきたしね」
直井「シャトル落下してる状態でね、無重力の中でやろう!」
藤原「最近、そういうコラボとか流行ってるからな」
増川「流行ってる流行ってる」
直井「っていうか、そういう問題じゃなくねえ?」
●いや、いいよいいよ。終演直後なんだからはしゃいでくれよ。
藤原「ふふふ、今後のことですよね……今後の話をできるだけ避けるバンドで有名だと自負してます。けれどもまぁ、決まってます! 次にやることは。でも、内緒です(笑)」
●ははははははは。けち。
藤原「やること決まってますって言えることって、凄い珍しいんだよ?」
●あ、そうだよね。なかなか言わないよね。
藤原「なかなか言わないっていうか、ないんだよ!」
●じゃあ目の前に本当にたくさんあるんだ!
藤原「あるよ(笑)。っていうか、結構いっぱいあるんすよ。やらなきゃいけないこととかやるべきこととか、本当にワクワクしてることとか、結構いっぱいあるんすわ。でも内緒にしとく。1mmも内緒にしとく。リスナーのみなさんには本当に申し訳ないんですけど、設計図見ちゃったら萎えるでしょ、やっぱ」
●でもさ、こうやってワクワクしながら、もったいぶりながらもそう言いたいってことは、かなりノッテるんだね。この一言はデカいね。
藤原「そうね、たぶん自分の中でちょっと嬉しいんだと思う(笑)」
升「まあみんなね、俺らが地下潜っても目を離さずに見守っていただきたいなと」
<ガタガタガタガタ!――マイクが落ちる>
直井「おっと、升、マイクを持たずに大事なこと喋ったね!」
増川「なんかいいこと言ってたよね、今(笑)」
藤原「ほら、もう一回言って、升、誕生日なんだから」
升「いやいや(笑)、だから俺らの姿が見えなくなるとレコーディングしてんのかと思って目を離しちゃう人が多いと思うんですけど、そんな時もホームページをチェックし続けてね。だって本当に何があるかわからないからね!」
藤原「わかんないからね!!」
升「たぶん、そのニュースを聞いたらみんなびっくりするもん! ぐしゃーってね!!」
●ぐしゃーって(笑)。
増川「今回のプロジェクト並みにびっくりするよ!!」
升「まぁだから、まだ具体的なことは言えないんですが、僕らから目を離すなと」
藤原「大きく出たな(笑)」
升「まぁ目を離してもいいけど、何かあるぞと」
藤原「……嫌いにならないでって言いたいんでしょ」
升「だからさぁ……わかるでしょ?」
●(笑)。
升「ミュージシャンはとかくさ、レコーディングとかやってると『なんか最近バンプ聞かなくねえ?』とかなっちゃうじゃん、とかくね」
藤原「とかくね。『もうダメになっちゃったんじゃねえ?』みたいなね」
升「そうそう、『いなくねえ?』みたいなさ。でも今回はやることあるから!」
藤原「でも別に突飛なことやろうとしてるわけじゃなくて。いつものスタイルで素晴らしい音楽に出会いたいっていう気持ちで活動してきた結果、先が見えてるところです」
●わかりました。今日は凄く素晴らしい夏の1日だったと思うんですね。だからこれはこれとして胸に留めて、またとっとと作ってね。
藤原「とっととね(笑)」
直井「とっとと曲書いてね! 藤、書いてくれ!!」
藤原「………………実はちょっとね、尻叩かれてるんだよね(笑)」★