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岸田繁(くるり)×無戒秀徳(ZAZEN BOYS) March 3 &10, 2005

photo『HOLIDAY INN BLACK』
on February 20 at LIQUIDROOM ebisu 
公開収録篇!



●岸田、大丈夫?
岸田「なんか風邪でねぇ、むちゃくちゃぼーっとしてる」
●いつぐらいからひいてるの?
岸田「いやぁ〜なんか先週くらいかな。あるレコーディングをしてて、それが終わると共に命運尽きたみたいな」
●やっぱりミュージシャンっていうのは本能的に、レコーディング中は病気にならないものなの?
岸田「やっぱり気ぃ張ってますからね。でももう今ふぬけみたいな。ごめんなさい(笑)」
●ふぬけ!? 今日のライヴ、がんばってもらいたいんすよ!
岸田「いや、だからそこに向けて……だから今はこう……ふぬけ(笑)」
無戒「もう相槌だけでいいから」
岸田「わかった。相槌しか打たない」
無戒「もう、『うむ』しか言わないですから」
●無戒は元気なの?
無戒「私は元気ですよ、はい。普通に」
●無戒が病に冒されたって話を聞いたことがないんですけど。
無戒「そうですねぇ。二日酔いぐらいですかねぇ。二日酔いの時に頭痛かったりすると、『ああ、風邪ひいたかな』と思ったりするんですけど、大体二日酔いですね」
●365日ほとんど酔っ払ってるんだよね?
無戒「いや、そんなことないっすよ」
会場「(爆笑)」
無戒「そんな、イメージで言わないでください(笑)」
●酔っ払ってると風邪ひかないんだよね?
無戒「ああ、風邪ひきそうになったら強い酒呑んだりしますよね。そしたら結構大丈夫だったりしますけどもね」
●実は岸田には1回、番組に出てもらってるんですけど。無戒は初めてなんで、ちょっと無戒とはこういう人だってことを200字くらいで岸田から語ってもらえると嬉しいんだけど。
岸田「(笑)まあたぶん、俺の知る限りでは、日本のロック・ミュージシャンの中で一番『マメな』男じゃないでしょうか。こんなマメなミュージシャン見たことない、俺」
●どうマメなんですか?
岸田「いやぁなんかね、一昨日もオマツリ・スタジオ(無戒秀徳のプライヴェート・スタジオ:MATSURI STUDIOのこと)で今日の打ち合わせみたいなことをやろかと。まぁ俺はビールをねだりに行っただけなんですけど(笑)。で、いろんなセッティングとかオマツリ・スタジオの成り立ちとか回転のさせ方を見てると、まぁ常人にはできない」
●自分にはできない?
岸田「俺みたいにだらしのない人には無理です。この人、実は凄いマメ」
●一昨日オマツリ行ったじゃない? 無戒って1回1回迎えに出てきて、帰るって言うとわざわざ玄関まで送りに行くんだよね。……(無戒に向かって)あなたさ、結構親のしつけがよかったんだろうね。
無戒「ははははは。だってそうしないと場所わからないでしょう? だから迎えに行かないけないんですよ。それに送りに行くのはねぇ、普通にねぇ、さよならって言いますよ、そりゃ俺だって」
●じゃあ無戒の中での岸田200字をひとつ。
無戒「シゲ?」
岸田「ははははは」
無戒「シゲはねえ……」
岸田「ほんまもんみたいやね、それ」
無戒「シゲは当然、音楽家としての才能は凄いもんがあると。まぁ褒めるけどさ(笑)。やっぱ音楽を作るっつったら、ほんとシンプルに言えばいい曲をストレートに……こんなひねくれた男なのに、凄くストレートで美しい、いい曲を作るなあと思うんですよね。ということは、ひねくれてるのは見かけだけで、清らかな心を持ったシゲちゃんなんだなあとね」
岸田「(笑)」
●シゲちゃん、その辺どないなんですか?
岸田「ふふふ、僕風邪ひいてるんでよくわからなかったんですけど(笑)。褒められるとね、なんかね、弱いんで。ありがとうございます(笑)」
●ふたりの出会いっていつぐらいなの?
岸田「だいぶ前だよね」
無戒「対バンですよ。我々が九州のほうから東京に出てきまして、こっちでライヴ活動し始めまして。それから間もなくだったという記憶があるけどなあ」
岸田「俺まだ京都に住んでた。僕らがデビューして直後ぐらいやったと思う。で、僕ら楽屋にいてて、漏れてくるわけですよ、彼らのサウンドが。えらい活きのいいサウンドが聴こえてくると思って、『これは面白い』とみんなで言ってたわけですよ。で、ナンバーガールかぁと。あんまりヴォーカルが聴こえなかったんですよね、ステージの脇に楽屋があったんで。でも暴れ太鼓とベースのギンギンギンギンギンッていうのと、ちょっとおかしなギターが聴こえてきて。で、僕はてっきり“ガール”っていうから女の子が歌ってんやろか、だから爆音でヴォーカルが聴こえへんのやろうとか思って。で、たまに叫び声のように声が聴こえるから――」
会場「はははははは」
●声にならない叫びが(笑)。
岸田「そう。それは僕は合いの手やろうと思ったんですよ。他のベースとかのね。で、そのライヴがジャーンと終わった後に、もうみんな引けて来てんのに、眼鏡をかけた年齢不詳の人が(笑)曲全部終わってるのに喋ってる……僕てっきり、NHKのイベントだったんでNHKの人かと思って」
●ははははは! 職員さん?
岸田「そうそうそう(笑)。ちょっと説教みたいなことをしてはったから、そういうユニークなDJさんとか現場の人なのかな、と」
●ちょっと立派っぽいからね。
岸田「そうそう、無駄に立派な感じがしたから(笑)。だからライヴ自体は観てなかったからね。その後打ち上げで『あの人ヴォーカルやで』って教えてもらって、『あ、そう』(笑)」
無戒「(微笑)」
岸田「それが最初。ナンバーガールの他の面々は割とカジュアルな出で立ちやったから、今風のね。だから僕、すっかりスタッフかと思って」
無戒「まぁ、まずバンドやってる人に思われたことはないです。だいたい学校の先生とかですね。『うちの学校にいる○○先生に凄い似ている』というのは、よう言われる」
●今でも?(笑)。
無戒「今でも言われます(笑)。くるりはねぇ、凄いおっちゃん達のバンドやろなぁ思ったの。音聴いた時は」
岸田「ああ、よう言われんねんね」
無戒「渋いなぁ思ってね。最初(の頃)が一番渋かったよ」
岸田「ああ、かもね」
無戒「今のほうが若い」
●会った時はどうでした?
無戒「陰湿な感じもしつつ。あと趣味の話とかを凄いしてたやん」
岸田「ああ、してたね」
無戒「だから凄い趣味人やなぁと」
岸田「ははははは」
●鉄道系?
無戒「そうそう(笑)。趣味人で渋い音楽やっとるなぁと。で、歳訊いたら全然俺より下やったし。おお、若えなぁと」
●無戒は岸田と一緒に電車乗ったことある?
無戒「乗ったことないねぇ」
●一緒に乗ると凄いよ。ずーっと喋ってるからね。何が凄いって、電車の音だけじゃなくて換気扇のプロペラで年度がわかるみたいな。
無戒「あ、そう(笑)」
●「このプロペラは今どき貴重なんですよぉ!」って。
岸田「まぁ何でもありますよ、その理由とか成り立ちはね。別にそこにあるパイプ……パイプマニアとかいますよ、たぶん」
無戒「いないっつーの、そんなの」
岸田「いるよぉ。絶対何でもいるって」
無戒「でも電車と言えば、私は電車マニアでも何でもないですけど、寂しい話があって。ブルートレインがなくなるっつってね」
岸田「なくなるね」
無戒「九州のほうに行く……」
岸田「『さくら』と『あさかぜ』(*収録の1週間後、2005年2月28日をもって廃線)」
無戒「あれはねぇ、寂しい話ですよね。なくなる前に1回くらい乗ってみたいけど。今時寝台列車で行くっていうのもないですからね。1回乗りたいなっていうのはありますけどね」
●ああいうの乗ると曲ができそうですよね。
無戒「ああ〜、できそうですね」
岸田「俺も乗ってみたいですね」
無戒「じゃあ乗りましょうか。乗るだけね(笑)」
●線路って日本全国ずーっと繋がってるんでしょ? だから列車1台貸し切って、ずーっとみんな泊まって音楽会とか“電車フェス”とか、面白そうじゃない?
岸田「いやぁ、でも寝台車とかは一人でしっぽり乗りながら、熱燗とかワンカップやねぇ。ワンカップとかで、なんか寝れなくてカーテン開けて、夜の車窓を見ながらやることもなく結局物思いにふけったり…………」
●……何? この色男。
岸田「ふふふふ。でもねぇ、寝台車とか乗ったら退屈……やと思うんです。なんかねぇ、病院ぽい。ベッドの固ーい感じとかシーツの色とか。あとほら、浴衣とか」
●そうなんだ(笑)。で、今僕が見て一番お二人で共通してるのは、やっぱり去年の暮れにバンドからドラマーが脱退したという。ちょうど同じくらいの時期でしたよね?
岸田「……うん」
無戒「……たぶん」
●で、両方とも新しいメンバーの加入も早かったですよね、正式メンバーではないにしろ。すぐにバンドを動かし始めましたよね。
岸田「まぁ早かったかねぇ」
●岸田って何かマイナスがあるとそれをすぐに取り戻して、尚さら突っ走って曲も作ってみたいなことをよくやりますけど、それは自然にできちゃう感じなの?
岸田「まぁできてるかできてへんか、わからないですけどねぇ。それは前のほうがよかったよぉ言う人もいるやろうし。……まぁ何も考えてないですね。前向きになるかどうかとか、そういうのも考えてないし。ドラムがいないと音楽ができないから、じゃあドラム入れましょうよということになりました」
●無戒はアヒトくんが去って、どういう過程を辿って新メンバー加入に至ったんですか?
無戒「だから結局、私がやってるZAZEN BOYSの発展と向上を図ってるわけですから、日々それをやってるわけよ。常にそれをやってるだけですねぇ」
●新ドラマーは松下敦さんという、バッファロー・ドーターとかもやってる方ですが、どういういきさつで加入することになったんですか?
無戒「面識はなかったんですけれども、思いついたわけですね。あのバッファローの松下さんのビートを。ZAZEN BOYSをあのビートでやったらどうなるかや?と。で、凄くイメージできて。実はいろんなドラムの人とセッションしたりですなぁ、一緒に音を合わせたりしてたんですよ、ずっと。松下さんのことは気にかかってたんですけども、面識がないと。と、言ってたら、うちのMATSURI STUDIOのスタッフが面識があったわけよ。で、同じように『松下さん、いいんじゃないの?』と言ってて。じゃあ連絡取ってみっかっつって取ってみたら、ちょうど東京に来てて――松下さんは長崎在住の方なんですけど、たまに仕事とかで東京に来る時があるみたいで。で、ちょうど東京に来てて『明日空いとる』みたいな話になって、『じゃあMATSURI来ますか?』『MATSURIのすぐ近くに住んでる』と。これはいい、早速やってみましょうっつってバーッとやってみたら、これはいい、カッコいいと。『やりますか?』『やります』『そうですか!』……そういう感じですかね(笑)。凄く自然にスムーズに、そういう流れになりましたねぇ」
●そういう時って、どういう曲を合わせるんですか?
無戒「そうですねぇ……適当にギターのリフ弾いたりですね、そうしたら被せてくるわけですね、そこでセッションですね。既存の曲とかはあんまりしなかったですね、その場でできた曲みたいな感じで。ビーフハートみたいなやつをやったら延々やってた気がするけど」
●キャプテン・ビーフハート?
無戒「ええ(笑)」
●くるりもいろいろセッションを重ねた時期がありましたよね。
岸田「はい。同じ感じですよ。『この曲とこの曲をやってきて』とか、そういうのはなかったですね。お互いその時点で持ってるスキルと感性をパッと出せる状態がいいと思うから、何も決めずにギターのリフなりを弾き始めて、そこにどう合わせてくるか、こう行ったらどう来るかみたいな、そのせめぎ合いだけでだいたいどういうミュージシャンかがわかる」
●そういう時の基準って何なの? ミュージシャンがひとつのバンドで付き合っていくミュージシャンとの出会いを求める時って、どういう気持ちなの?
岸田「ほんまにその人とやっていくんやったら、その人に恋に落ちなければならないですよね。雇うというよりは、もうちょっと…………ラヴ(笑)。いや、ほんまに」
●そのラヴはどういうふうに感じるんですか?
岸田「そいつがイケてたら惚れますし、イケてなかったらまあまあやねってことに……まぁそれはお互い様ですけど。まぁどんだけ凄いテクニシャンやったとしても、その人に変な性癖があって、どうしてもそれが俺には耐えられへんとかやったら難しいですよね」
●そういうこともあったんだね。
岸田「まあ、ありますよねぇ……(笑)」
●無戒もありますか?
無戒「うちも、ZAZEN BOYSのギタリストとか、ちょっと変わってますからね。その性癖で言えばね」
岸田「あの人変わってるね、なんかね」
無戒「変わってますよ。だから俺は逆に……逆にっつうか、当然人柄とかは一緒にバンドやる中で重要ですけど、人間対人間ですから。でもじゃあ仲よくやれればいいのかっつったら全然違いますね。やっぱりサウンドのぶつけ合いが上手くいけばいいと思うし。だから性的に変わった趣味を持っていても、サウンドのウマが合えば俺はオッケーですね」
●夜だけ一緒にいなければいいんだもんね。
無戒「だからいないっすね。いたくないっすね(笑)」
●(笑)。一昨日オマツリで合わせてた時も、ギター弾き合ってるとそれだけで盛り上がったじゃない? やっぱりセッションしながら、ああいう状態になってくの?
無戒「もちろんそうですよ。それが楽しくてやってますからね」
●当たり前のようで不思議な話を聞きたいんですけど、特にくるりの場合はバンド・メンバーがいろいろ変わったり、いろんなことが起こってここまで来てるわけですけど、でも「くるり」なんだよね。僕らも、そこで鳴らしている誰かが変わってもずっとくるりの曲が奏でられていくと、くるりだと思えるわけですよね。本人の中では、「くるりでいる」みたいな気持ちっていうのはどこかにあるの?
岸田「ありますねぇ、それは。人間は成長もするし、進化もすれば退化することもあるから、だから組んだ当時のくるりとまったく一緒かっちゅうとそんなことはないわけなんですけど。でも、そのバンドを組んだ時のことは鮮明に覚えてて。くるりを組んだ時に持ってた『俺らはこういう音を出してお前らに叩きつける』みたいな、そういうヴィジョンみたいなのは……それまで別のバンドやってて新しくくるり組んで、自分達的には凄く新しいことをやってるっていう気分に浸ってましたから。そん時のヴィジョンっていうのは、実は今もそんなには変わってなかったりするんですよ。新曲ができて初めて人の前でやる時とか、スタジオで適当にジャム・セッションして盛り上がってる時の気持ちとか、他のバンドに自分がいたりとかしてやるのとは全然違う気がする」
●なんでそういう気持ちを持ち続けられるんだと思います?
岸田「ま、かろうじてオリジナル・メンバーがもう一人残ってるからちゃいますかね。それだけやと思いますよ、たぶん。俺だけになったら、たぶんもうくるりじゃないと思いますけど」
●それはさっき岸田が言った「愛し合う」ってことと同じようなことなのかな? サトちゃんと愛し合う。……けっこうサトちゃんと愛し合いたい人って、この会場にいると思うんだよね。
岸田「絶対にやめといたほうがいいと思う、絶対に(笑)。でも……どうなんやろうね、ほんまに最近深く考えてないんで。自分らがバンドをやってる意味なんて、ちょっと深く考えれば『ああ面倒くさい! もう辞めてしまえ!』って思うことなんてすぐできると思うんですけど、でもそれよりは、パッと思いついた音楽的楽しみをすぐにやっていけるいい受け皿があるわけですから、それだけ楽しんでやってればいいとは思ってるんですけど」
●深く考えなくても続けていけるし、新しい曲も生まれるってことは素敵ですよね。
岸田「うーん、苦労はもちろんしてるとは思うんですけど、でもまぁ、そんなに深く考えることでもないかなぁと最近は思い始めて」
●ところで、スタジオのトイレの状況はよくなったの?
岸田「いやぁだから“BIRTHDAY”という曲が出るんで、みんな買ってください」
●(笑)“BIRTHDAY”の印税でスタジオにトイレを作ろうってわけですか?
岸田「そうですね」
無戒「便所場がないんだよね」
岸田「便所場がないんですよ。こないだ尿管結石っていうのもやったんで、みんなに助けてもらってトイレ作って、ちゃんとしたいですね」
●尿管結石って堪んないでしょ。びっくりしちゃうでしょ。
岸田「あのー、世の中にあるいろんな不快な痛みの結集ですよね」
●結石がねぇ、ちんこに溜まるわけですからね。
岸田「ちんこはねぇ、痛くなかったですね。腰ですね。僕レントゲン取ったんですけど、そら豆みたいな腎臓があって、そこから膀胱まで行ってる管がきゅっと曲がってるんですけど、そこに詰まったみたい」
●カッコよさそうじゃん、それ。ジャケ写にいいね!
岸田「ああー……メタル・バンドとかやったらイケるかもしれん。でも本当にねぇ……入院したんすよね。入院自慢なんてしたくないんですけど、それで、結構かわいい看護婦さんやった」
無戒「あははははははは!」
岸田「いや、ほんまに。美味しいでしょ?」
●美味しいね。
岸田「でもねぇ、モルヒネみたいの打たれてるから、男として機能しないわけですよ、全っ然。ふにゃふにゃでぼやーんとしてて。で、俺もうあかんなとか考えるんやけど。『もうあかん。でも曲とか今俺作れるかな?』とか思って頭ん中で考えるんですけど、もう2節くらいで終わってしまうんですよ。もうあかーん……みたいな」
●今のは、男の「芯」がしっかりしてこそ音楽も作れるし男としても生きていられるって話なわけですか?
岸田「(笑)やっぱ健康であることの大切さというか……。いや、俺のちんこはあくまでも俺の健康のバロメイターの一例に過ぎひんわけですけど、ただその看護婦さんがくるりを知ってたんですよね」
●……………。
岸田「言ってないですよ! 僕からは。言ってないですけど、ただちょっとアニメ声の人だったんですけど」
●アキバ系かよ。
岸田「『(はにゃはにゃ声で)キシダさんはオシゴト何されてるんですかぁ? キシダさんってもしかしてあのキシダさん!?』みたいな」
●それのどこがいいのよ?
岸田「ははは。いや、ちょっと可愛かったんです。可愛く見えた。でも凄い嫌〜な気持ちになって。何て言うんかな、梅酒漬ける樽みたいなのに小便溜めてかなきゃいけないんですよ」
●石が出たかどうか確かめなきゃいけないし、血が出てるかどうかとか観るためにも重要なんですよね。
岸田「そう。それを洗われてたりとか。まぁ自分が老人になったらそういう介護をされたりするのかもしれないですけど、僕病院とか行ったことなくてそういう世界無縁だったから、凄い凹んで」
●凹みながらも、可愛い看護婦さんにそういうことしてもらうんなら悪くねえなって?
岸田「いやぁ、悪いですね。死の匂いがしたから。もう二度と嫌やと思って」
●無戒もそういう体験したことあるよね?
無戒「何ですか!?」
●いや、当てずっぽうで言ってみた(笑)。
無戒「まぁ小学校卒業の時に盲腸にかかって、それ切るために入院したくらいですかね。でも、これ激愛の告白なんですけども、私のいわゆるよく言う初恋っていうのは、その時の看護婦さんです」
岸田「ははははははははは!」
無戒「初めて本当に憧れたっつうね。生身の人間にね」
岸田「ははっはははっはは」
●その方の情景描写が欲しいんですけど(笑)。
無戒「もう20年くらい前の話ですからね、いろいろ自分の頭の中で変わってきてると思うんですけど、結構ねぇ、ふくよかな人だった気がするなぁ。うん。まぁとにかく優しいわけですよ。だからそれで普通に恋心を持ってしまったっつう話やけどね」
●ああ、子供の頃はあれが仕事だってわからないですからね。
無戒「わからないね」
岸田「(笑)」
無戒「だから優しい人、たとえば美容室のヘアカットの人とか凄い優しいわけですよ。何回か惚れましたよね」
●ははははは! 優しくされると弱いんだ。
無戒「優しい人がいいっすよね」
岸田「ふふふふふふふふふふふふふふ」
●やっぱり音楽作っても、メンバーにいい曲だって褒めてもらうとくーぅっと上がる?
無戒「むちゃくちゃ上がりますね、それはねぇ。でやっぱ、美容師のお姉ちゃんとかに『この前の曲カッコよかったですね』とか言われると、それは至上の喜びになるかもしれないね————それを求めてやっとるわけだ」
●聞かせてるんだ(笑)。
無戒「聞かせる時もあるわ、それはさ」
●あ、そう。メンバーは無戒のことを持ち上げ上手なの?
無戒「いや、それは持ち上げはしませんよ、社長じゃないんだから(笑)。バンド・メンバーは一緒に音楽作る人だからね。こうしよう、ああしようって具体的な話をする」
●話が戻りますけど、ZAZEN BOYSもアヒトくんとの別れがあって。アヒトくんはZAZENBOYSにとってだけでなく、無戒秀徳の音楽人生にとって非常に重要な人でしたよね。
無戒「ええ」
●その辺、自分の中で気持ちはどうだったんですか?
無戒「それは残念極まりない気持ちはありますわな。しかしながら、その自分のやりたいことをがっつりやるってとこでは『しょうがねえ』と。しょおがねっ!」
岸田「何、今の?」
無戒「しょおがねっ!!」
岸田「何、今の?」
無戒「しょうがないってことですわ。しょおがねっ!!!」
●ごめん、俺それリアクションできないわ(笑)。現場でそう言ったんだ?
無戒「しょおがねっ!とは言ってないですけど(笑)。まぁまぁいろいろ話しましてですね。アヒトイナザワ本人もやっぱり自分が音楽やっていく中で、自分としての音楽道っていうのを考えてましたし。そういう話をしましたわ」
●それはやっぱり盟友だからこそ頑張ってほしいってなるわけだ。
無戒「そりゃそうですよね。当然ですよ、それは」
●で、そこで無戒はどうしようと考えました?
無戒「いや、何も考えないですよ。先に進めると、いうことしか考えてないですね」
●非常に失礼な言い方ですけど、そこでZAZEN BOYS以外のことをやってみようとは考えなかった?
無戒「だからこれ基本は独善的な、独りよがり的な考え方かもしれんけども、ZAZEN BOYSを始めるにあたって、とにかく自分の好きなロックンロールをやるっていう目的でZAZEN BOYSを作っとりますからねぇ。だから自分のやりたいことを100%やる場所なんですよ。だからそれは形はどうあってもね。最初から形はどうなるかわからんと。前のバンド、ナンバーガールが解散した時もそやったけど、形は重要じゃないと思う。バンドらしい体裁を作ることを目的としてやってるわけじゃないわけで。サウンドとしてバンド・サウンドでしか私はやりたくないのでバンドやってますけども、バンドっていう体裁を作ることは目的じゃない。そういうのが最初にあってZAZEN BOYS始めてますので、形はどう変わってもこれはZAZEN BOYSであり、私・無戒秀徳の音楽と言えるわけよ。……しょおがねっ!」
会場「(笑)」
●なんでそんなにバンドがいいんですか?
無戒「バンドがいいんですよ。なんでじゃねぇっつうの、バンドがカッコいいの。それがビリビリくるからやってるわけよ。アホかっつうの」
●「バンドやってる」っていうのが最高にガーンと来るんだ? それはバンド始めてからずっとそうなの?
無戒「そうそう。だからもっと具体的に言ったらですね、エレクトリック・ギターが前に出て、ドラムとベースがおって、その組み合わせで鳴ってる空気の振動に、特にビリビリ来るわけね、私としては。それは最初に何らかのものを聴いてた時からそうなってしまったっていうのがあると思うんす」
●そういう中でメンバーも変わっていって、出していく音の中で音楽性も変わっていくと、それはいい意味での刺激にもなっていくんだろうね。
無戒「そうですそうですそうです」
●岸田はなんでバンドなの?
岸田「うーん……まぁバンド・サウンドは好きですけど、それ以外にも好きな音はいっぱいあって。でも無理やりバンドでやってみるっていうことを、今やってます。だから俺はたぶん、バンド・サウンドで好きなのはザ・フーだけ」
●ほーー。
岸田「うん。ザ・フー以外は別に興味がない」
無戒「レッド・ツェッペリン(は?)」
岸田「レッド・ツェッペリンは、ジミー・ペイジは好きだけど、バンド・サウンドにはさほど興味ない。ボンゾのスネアの鳴りとか、具体的なことは興味あるんですけど」
●フーのどこに一番バンド・サウンドとしてのよさを感じるの?
岸田「うーん、わからん、それは趣味ですよね。顔とか演奏してる雰囲気とか全部含めたもの。で、いいと思えるのはザ・フーだけ。でも音楽そのものでは僕はいっぱい好きなものはあって。ユッスー・ンドゥールとか(イーゴリ・)ストラヴィンスキーとか。ロックとかじゃない音楽のほうがもしかしたら好きなの多いかもしれない。たとえば、“くるみ割り人形”とか聴いてこんな感じとかっていうのが自分の中に共有できたら、それをギターで鳴らしてドラムをパッコンパッコン叩いて、その感じでできたらいいなって。割とそうやってやってきてる。やってきてるっていうか、『なりきり』みたいな」
●バンドじゃないものをバンドでやってくみたいな。
岸田「『俺らはくるみ割り人形や!』みたいな(笑)」
●「俺らは他のバンドとは違うんや!」とか?
岸田「いや、そういうのも思わないす。すごい昔は俺クラシックばっかり聴いてたから、なんて言うんだろう……『ワン、トゥ、スリー、フォー、バーーン!!』っていうのに全然シンパシーを感じない。ひゅって挙げて、ヴォーーーーっていう(笑)のが好き。そういう気分でやってる、僕ほんまに。でもクラシックの人みたいにちゃっちゃかちゃっちゃか弾けたりとか、譜面がばっちり読めたりとかしないんで。そういう教育は受けてないから。でもたまたまロックみたいなことをやり始めたから、やってるけど」
●無戒は自分の中に理想のロック・バンドっているの?
無戒「ツェッペリンですね。なんか凄く合体メカみたいな感じがしますけど、レッド・ツェッペリンは」
●お顔は?
無戒「顔ねぇ……なんかねぇ、本当はロック・スターに憧れると風貌とかファッションとかも全部痺れるなー、カッコいいなーってなるはずなんですけども、レッド・ツェッペリンの風貌だけは何の興味もないんすよ。むしろ絶対に自分はあんな格好にならんし。それでも好きなんですよ。特に後半のね、'79年くらいのライヴ映像観たらですね、ジミー・ペイジはほんっと日曜日のおっさんつうかですね、スラックス穿いてレーヨンみたいな生地のシャツ着て」
●それでいいの?
無戒「俺は着ないなーと思ったりしてですね」
岸田「はははははははは」
無戒「そういうので言ったら、さっきのザ・フーとかは全部ひっくるめてかなりガシガシ来ますけどね。ツェッペリンはサウンドとして凄く個人個人が合体して、ひとつの凄く固い塊を作ってる気がするんすよねぇ」
●ジミー・ペイジってすーごいケチなんだって。
無戒「はぁ、どういうところが?」
●日本に来た時に西新宿行って、欲しい海賊版とかしこたまタダで持って帰るんだって。
無戒「あれ? 俺が聞いた話は、とにかくレッド・ツェッペリンのブートレグを、『海賊盤は許さん!』みたいな感じで買い占めるっていう話だったけど」
●あのね、1年目がそれだったんだって。「俺のブートを売るとは何たることか!」って言って全部撤収させたんだって。で、2回目はいろんなところに行って「このフーのブートが欲しい」とか「キンクスのブートが欲しい」とか、いろんなものをブアーッと持っていって。で、なんでそれがタダで持って行けたかっていうと、「お前ら俺のブート売って商売してるんだろ。だったら俺がブート貰ってってもいいじゃねえか!」っつって持っていちゃって。で、3回目の来日の時は西新宿のレコード屋、みんな「ジミー・ペイジが来る!!」って言って店閉めたって。
岸田「へぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
●ジミちゃんも大変だね。では、今日はこの後、岸田繁×無戒秀徳でライヴをやってもらうんですが、去年の秋に京都で一緒にやったことがあったんですよね?
岸田「はい」
●その時はどうだったんですか? あんまりこういうことってないですよね?
岸田「まぁなんか、前に一緒にやった時は僕が企画に加わっていたので気軽に声をかけやすかったんですけど。(無戒が)弾き語りで最近名を馳せてらっしゃるんで、弾き語り対決じゃないですけど。まぁ一緒にね、CHAGE&ASKAみたいにお互いの曲を歌ってコーラスしてとか、そういうのもなんか難しいし。というかお互いスタイルがまた違いますから。でも魂のところは凄く惹かれているので。あとはネタとしても面白い。不思議な空間が醸し出せると思ったから。それでやってみたら思いのほか凄い面白かって。それでテキーラをショットでカッとくらいながら、『またやろうや』とね。それが今日実現に」
無戒「西部講堂(京都大学構内)でやったんすけどね、深夜にやったっていうのがよかったですね。凄い空気がね、雰囲気がスペシャルな感じになったのは覚えてますけどね。まぁ今日何やるかは言ってしまったらつまらんけん、言わんけどさ。まぁふたりで殴り合いをするっていう話なんですけどね」
●(笑)綿密に打ち合わせてましたよね、殴り合いを。
無戒「ええ(笑)。まずジャブから。そして俺はこういうふうに避ける(避けるフリ。そして殴るフリ)」
岸田「(スローに避けるフリ)」
●(笑)こういうことやっていってさ、一緒に曲作るようなことができてくるといいね。
岸田「まぁそのうちやるんじゃないかな」
●言ったよ、この男は。この面前で(笑)。
岸田「でもたまに遊んだら適当に作ってるよ」
無戒「うん」
岸田「うーん……だいぶ前にオマツリで“Too Many Bands”って曲を作ったの覚えてる?」
無戒「ありましたね(笑)。夜中に。酒呑みすぎて、完成はしたと思うんやけど、まったく覚えてないね。歌詞とかコードとか、まったく覚えてない」
●それは録ってもいないの?
無戒「録ってなかったっすねぇ」
岸田「なんかね、その時荒れてた。バンドが多過ぎるとか言って(笑)」
●はははははは!
無戒「それで“Too Many Bands”って曲ができてしまったけども、残念ながらまったく覚えてないね(笑)」
●じゃあ今日は楽しみにしてますんで。ありがとうございました。
岸田&無戒「ありがとうございましたー」★

Last Update : 2005年03月11日 (金) 01:32

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