EURO 2004 in ポルトガル Day 8

Day 8
June 29, 2004

 今日はユーラシア大陸の最も西側にある国ポルトガルの、最西端となるロカ岬に行くことにした。別に今までの自分と関係のなかった大陸の西の最果てに対して、大した感情は湧かなかったが、そこにはまるで『猿の惑星』や『ジュラシック・パーク』に出てくるような、原始的なまでに壮大な断崖絶壁があった。僕は断崖絶壁にとても弱い。映画『さらば青春の光』で最後にブライトンの絶壁からべスパを投げ捨てる、あのシーンを観てから「ブライトン化」した絶壁を見るとムズムズするのだ。日本には犬吠崎から少し外れたところに「ニッポンのブライトン」がある。ロッキング・オン・ジャパン時代はそこでよくロケをした。ミッシェル・ガン・エレファントが『カサノバ・スネイク』をドロップした時の表紙巻頭撮影をした場所だ。ロカ岬は犬吠崎よりも、ブライトンよりも、遥かに壮大なスケールでブライトンしちゃっている断崖絶壁岩肌ベイベ―だ。行くしかない。気合いを入れて行った。

 まずはシントラという街の廃墟と化した古城に登るべくバスに乗ろうとした時、ひとりの日本人と出逢った。ここに来てから初めて本格的に日本の人と話をした。その人は34歳で今しかないと思い、会社を辞めて世界一周旅行を1年弱の時をかけて果たそうとしていた。飛行機で3万1千マイル分のフリー・チケットを60万で買って、それで駆け巡っているのだという。60万出すと、ほぼ世界を廻れてしかもビジネス・クラスに乗れるのだという話を初めて聞いた。その人は貧乏旅行でもなければリッチ・トリップでもない、その時の調子に合わせながら、使う時は使って使わない時はとことん節約して旅しているという。イースター島から始まった世界一周の内、ほぼ4ヶ月が過ぎて南米からこのポルトガルに乗り込んでユーラシア大陸で夏を過ごすらしい。デジカメでいろいろ写真を見せてもらった。モアイ像、イグアスの滝、塩田、ワクワクした。特に南米に対していろいろな話を聞いた。僕は今回、この転機にあたって旅を試みようとした時、3つのポイントで迷いに迷った。ひとつはアイスランドでブルーラグーンという東京ドーム4個分の人工温泉に入ること。このバカげた大きさの人工温泉は、そのスケールでないと奔放かつ壮大かつ厳粛なかの地の自然と釣り合わないから出来たものだ勝手に判断し、何しろ行きたくて仕方がなかった場所。もうひとつがブラジルで好きな建築物を観て好きなブラジリアン&ラテン・ハウスで踊り狂い、去年のベスト映画だった『シティ・オブ・ゴッド』の舞台である貧民街の生命力を感じること。そしてポルトガルでユーロを観ることだった。最終的に今でしかないこのタイミングでのポルトガルを選択した。旅は本当にタイミングだと思う。自分がオーガナイズした1回目のロック・イン・ジャパン・フェスティバルが台風で途中中止になった時、本当にいろいろあったので、長い休みを会社にもらった。その時はちょうど20世紀最後のスペースシャトルのフライトがあるというので、僕はオーランドのケネディー宇宙センターへ行った。素晴らしかった。旅ってそういうもんだという観念が出来上がっているので、今回はユーロとの出逢いを大切にしたくてここへ来た。しかし、ブラジルはとても気になる。いろいろ話を聞いた。イグアスの滝の豪快さ、アマゾンの意思の深さ、いろいろ聞いた。食い物が凄かった。アマゾンへ入ると、亀が喰えるのだと言う。意図的には取らないが、ボートに引っ掛かったたものや死んでいるものは拾い上げて食うのだと言う。絶対にわざと引っ掛けている筈だ。亀は丸焼きにして皿に盛り、甲羅を外して喰うのだという。とろーっとして、内臓好きにはたまらない味わいだったらしい。感心していると、それだけでなくマナティーも食ったという。マナティー―――人形伝説の素と言われる生き物。遠くから見たら人魚みたいだったので実在するんだと思って近付いたら、白くて肥えたイルカのような、セイウチとアザラシの交尾で生まれた特殊遺伝子のようなあのマナティーだったという間抜けな話。誰があんな生き物を人魚と間違えるんだっつーのという突っ込みが世界中の水族館で語られている、本人の思惑とは関係のないところで不細工扱いされている悲劇の生き物、マナティー。それも喰ったと言うのだ。マナティーもわざとは捕獲しないが引っ掛かったり―――絶対にわざと引っ掛けているな、これは。鯨みたいな味覚なのか? 鯨ベーコン代わりか?と訊ねたら、あれは以外にもさっぱりした白身魚のようだったと言うのだ。世界はまだまだ未知の味覚でいっぱいだ。口を開けてるだけじゃ、何も入ってこないのだ。喰わないと、マナティーも。そうそう、彼は面白いことを教えてくれた。ブラジルでは、殆んど誰もノゲイラのことを知らないし、格闘技や空手は本当にマニアックなスポーツらしい。そうそう、彼が世界を廻って呑み喰いして、頭の中の価値観ががらっと変わったものがひとつだけあったという。それはパイナップルだと言うのだ。ブラジルのパイナップルは得体の知れない鮮烈な密の味がするそうだ。うはっ、食べたい。ちょっと前に書いた、パイナップルの自説は彼の話を前に無力となった。食べたい、もっといろいろ喰い尽くしたい。

 ロカ岬も楽しかったし、マナティーを食べる想像にふけりながら、サングリアを流し込むのも何だか素敵だった。マナティーの話を聞いていたら、再びトップレス・ギャルを見たくなった。再びおっぱい美女を見つけて人魚と間違えて話し掛けてみるのも案外いいんじゃないか? と思ったのだ。しかし、今日はふたりしかいなかった。人魚ならふたりいれば充分だが、やはりトップレスはトップレスなわけでふたりだけじゃとてもおっぱいビーチとは呼べなかった。今日はおっぱい4つビーチだ。あの溢れんばかりの入れ喰いおっぱいは、週末だけのパラダイスのようだ。みんな、ビーチで鼻血出すなら、週末しかない。赤線引っ張って憶えておいて欲しい。

 夜は仔豚が食べたくなった。こっちでは仔豚のことを「レイタオン」という。名前がカッコいい。中世のポルトガルをひとりで救った王子の名前のようだ。知らないが。1軒レイタオンがある店を見つけてオーダーした。5分後、「今日は仔豚がいねえ」と言われた。こうなるとどうしても食べたい。とりあえずここではオムレツだけを食べて、次へ向かった。が、これがなかなかない。仔豚を追い求めて、80分ほど歩いてしまった。80分後の仔豚はあまりにも鮮烈な肉々しい味覚で僕のストマックを甘く焦がしてくれた。特にパリッとした皮せんべえが美味かったなあ。豚も鶏も、味が濃い。それぞれの生き方やグルーヴのまま暮らしている肉を喰わせてくれるからだ。人間の勝手なペースで混乱した生き物の肉とはわけが違うのだろう。ちょっと寒気がしてきたし、腰のヘルニアもSOSを出してきた。今日も踊りたかったが、ホテルへ戻ることにした。明日は最高の決戦を観戦、そして国を挙げた闘いが待っている。明日の夜は勝っても負けても祭典だろう。眠れない夜と過ごすためにも、今日はおやすみなさい。といっても、もう27時半なんだけどな。



 

Last Update : 2004年06月29日 (火) 22:39


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