本当の意味で珍しい獣と書いて珍獣と呼ぶべきアーティスト、それがみんなのやすゆきチャンこと岡村靖幸。そんな珍獣っぷりを音楽的に堪能するべく企画されたのが、このセルフリアレンジ/リミックスアルバム『ビジネス』です。
この15年ほどの間、やすゆきチャンはあまり多くの作品を発表していません。―――でもこう書くと、やすゆきチャンはいつも怒るんです。「何言ってるの! ほら、あの人に作曲したし、あの人のプロデュースもしたし、あんな人のリミックスまでしちゃてるんだよ、僕は。こんなに作品出してる人も珍しいでしょうに」。でもね、ならば何でやすゆきチャンは自分の名前でいっぱい作品を出さないの? 「………そりゃあ……まぁ、あれですよ…………あれがあーなっちゃってあーなっちゃうと大変だからですよ」。………あぁ、やすゆきチャン、僕たちみんな、もっとやすゆきチャンが作って歌う音楽でスイングしたいんだよ。知ってる?
実はDJもやるし、レコード購買枚数もTVチャンピオンに申請したくなるほどのやすゆきチャン。夜な夜なクラブで「あの大きな体で、妙にクイックなブレイク・ダンスしてるの誰?」と噂になってもいざ知らず、今日もやすゆきチャンはリズムの息子として生きてます。ならばそんなダンサー:やすゆきチャンと、歌って泣かせる音楽家:やすゆきチャンがもっともっとディープに合体した作品があればいいんじゃない? 「おげっ」と一言残して、やすゆきチャンはすぐにスタジオに篭ってしまいました。本当はスタジオで楽器触るのが大好きなんだよね。だって、他に趣味がないしね……………。
そして生まれたのがこの『ビジネス』。水を得た珍獣の如く、というかただの水を得た珍獣のやすゆきチャンは、ここで自分の音楽に限界いっぱいまで強力なリズムのバネを履かせました。そしてゴージャスで骨太でファンキーなダンス・ポップを生んじゃいました。ただでさえ骨太重量級ファンクの王子様:やすゆきチャンが、「もっともっとリズムをおかわり。あ、特盛りでお願いね!」したらどうなっちゃうの? その答えが、この必殺パーティー・タイム・アルバムです。しかも全曲歌い直し!! 自らの名曲をおもちゃ箱引っくり返して持ち出し、それをもう一度分解して新たに作り直す。そんな贅沢な「お遊びしちゃった」作品を『ビジネス』と呼ぶとは、相変わらずやすゆきチャンはおへその位置が斜めだね。
M1:intro―――始まりはいつもけったいなやすゆきチャン。今回は去年のツアーのファイナル、NKホールでの激しぶMCです(しかも本人じゃないのよ、叫んでるの)。さてはこりゃ、同時発売のライヴDVD『Me-imi Tour 2004』の宣伝だな。な?
M2:ア・チ・チ・チ―――TVでもイベントでも必ずプレイする、実はやすゆきチャンお気に入りの一曲。クールでスタイリッシュな「カンフー・ハウス」は、思わずタランティーノに空輸して次作のテーマ曲にとお願いしたくなる伊達っぷりを浮かべてます。
M3:聖書(バイブル)―――最近はミッチーもカバーした、マニアのアンセム・ポイント満点曲。ここでは最近型のやすゆきチャンの「お歌」で、さらにイヤらしく迫ってきます。言葉じゃなくて歌でしかナンパ出来ない法律があったら、やすゆきチャンは世界一のプレイボーイなのにね……………。
M4:come baby―――ご存知「岡村と卓球」からのシングル曲。悪魔の世界から淫靡に誘うゲイ・ディスコ・チューンだったオリジナルが、さらにマッチョな肉付きのいいぶっといファンクに変身変身!! アマゾンの奥地から、ゲイのみなさんが1万人ほど上陸してきたような錯覚をおぼえるムンムン・ディスコ行進曲。
M5:adventure―――これまた「岡村と卓球」からだが、何でシングルにならなかった!?と多くの避難を浴びた名曲。通信教育のナレーションもしくは昭和の天皇の挨拶のようなアナウンスから始まり、夢見ごこちエレ・ポップな原曲のよさを活かしながら、後半ではフィルター使いまくって音のネジが緩んだり張ったりもう大変。そして怒涛のブレイクビーツからまた甘美な世界へ逆噴射。これぞやすゆきチャンpresents「リズム大国ひとり旅」。
M6:Check out love―――最後を飾るは、1stアルバムからの青々しい曲。「ありゃ、スタイル・カウンシルか!?」というブルー・アイド・ソウルならぬイエロー・スキン・ソウルに展開し、そして最後は肉厚なロッキン・モータウンへギンギンに突入。ほんとリズム上手なやすゆきチャン!
ここには60年代全盛のリズムもあれば、2005年型のグルーヴもたんまりあります。やすゆきチャンは僕らを誘いながら、タイム・マシーンに乗ってとても素敵なダンスのワープを試みました。
何でそんなことが出来るの? それはやすゆきチャンの名曲自体が、時代をワープした普遍的な名作だからです。世界が哀しみに暮れようと、やすゆきチャンの音楽は幸せな花道を踊り続けます。好景気に浮かれようと、やすゆきチャンのバラッドは枯れた目からも涙を流させ続けるでしょう。素敵な音楽には素晴らしいメロディーとカッコいいリズムが必ずあります。やすゆきチャンは全部持ってます。音楽しか出来ないし、音楽としか愛し合えないから、やすゆきチャンはとことん音楽と、全部を分かち合います。
『ビジネス』は音楽が音を立てて踊っている、楽しくも幸せなアルバムです。ただのマニア向けのリミックス・アルバムではありません。やすゆきチャンはマイケル・ジャクソンとは違うけど、マイケル・ジャクソンのお家=ネバーランドみたいなものです。遊園地もあれば夢もあり、「もっともっと愛し合いたい」って願いが甘酸っぱく匂ってきます。リズムは楽しむために生まれてきました。僕らも楽しむために生まれてきましたよね? じゃあ、リズムと一緒に、『ビジネス』と一緒に、楽しみましょう!