レミオロメン『ether[エーテル]』(AL/ライナーノーツより)

photo こういうアルバムを作ったロック・バンドこそが、「覚醒した」と語り継がれるべきだ――『ether[エーテル]』はそんな鮮やかな金字塔である。

 とても3ピース・バンドとは思えないヴァラエティー溢れる音楽性、何処までも響き渡りそうな飛翔感、自分だけに語りかけられているような錯覚を覚える、愛についての叫びと囁き。「永遠と一瞬を音で繋げることが出来るなら、それはこんな音だ」と夢見ていたような楽曲が、次々と浴びせかけられる。
 心に響く素晴らしい音楽は、それを聴いているだけで自分の過去を振り返ることも出来るし、自分の未来へと想いを馳せることも出来る。そして何より「今」この時にこの地を踏みしめている自分の意味を感じることが出来る。そうなのだ、音楽は永遠と一瞬の間を行き来する光の結晶のようなものだ。だから純粋で美しくて、そして強くなければいけない。『ether[エーテル]』はそんな音楽のエネルギーそのものだ。
 野性的な線の太さと樹木のような聖なる繊細さが同居する藤巻のヴォーカル。スティックの先っぽに音符の光を灯して千手観音のように振るう神宮司の華やかなドラミング。全てのサウンドを積み台に載っけてグルーヴというトラックを風を切って走らせる「音速の宅急便」と言うべき前田のベース。見事にバラバラでありながら、見事なフォーメーションが組める3ピース・バンドである。その3本の矢が飛びたい方向に羽ばたいているばかりでなく、何本も折り重なるストリングスや、プロデューサーでありピアニストでもある小林武史というエッセンスが、レミオロメンという宇宙を誰の耳にも響くように奏でている。このアルバムは俗にいう「小宇宙」なんてもんじゃない。宇宙だ。これだけ聴きやすいのに、それとは正反対のベクトルにある「何だかわかんないけどデカい世界だ、ここは」という圧倒的な迫力。ラヴとポップに彩られた宇宙だ。
 コンビニでも、ドン・キホーテでも、スターバックスでも、通りにあるスピーカーでも、どこで流れても心地よい瑞々しいアルバムだ。しかし、この作品の本当の真価はそこにはない。聴き手を全く選ばないこのアルバムが訴えかけているのは、「誰にでも聴いてもらいたいからこそ、誰もが聴き流せない音楽を響かせるんだ。それが音楽という魔法の力なんだ」という確信だ。誰もが耳からこぼさない音楽だからこそ絶対に心の奥まで届かせ、そしてそれぞれの気持ちをガラッと変えるんだ、という心の革命を促すテンションがこのアルバムの根っこにある。それがレミオロメンだ。それが3ピース・ロック・バンドとしてこのアルバムを生み出した彼らのメッセージだ。
 このアルバムがむせ返るほど蒼々しいのは、ロマンスに酔っているからではない。逆だ。この世界が全く蒼々しくないから、嘆いているのだ。負のエネルギーがまき散らされているから、正のエネルギーを浴びせ掛けたいのだ。傷ついているから治療するのだ。そのために呆れるほど蒼々しく格闘しているのだ。そして自分達の音楽で一瞬だけでもガラッと世界を蒼々しくしてしまいたいのだ。素晴らしい音楽はそんな革命を行使出来ると、信じて鳴らしているのだ。

        君をもっと 愛をもっと 欲しいのさ
        背中までいっぱいで 目が覚めるような
        声がもっと 聞きたくって 近づいた
        手のひら合わせたら 世界が変わる
                       (“南風”)

 誰にでも優しく響くのに、アナーキックだし挑戦的だ。これがロック・バンドが生み出すポップなアルバムだ。これが本当に世界を変えるきっかけとなるロック・アルバムだ。―――『ether[エーテル]』はそう告げている。

Last Update : 2005年03月25日 (金) 02:27


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