飛べないから飛びたい、死があるから生きる意味を考える、一人っきりだから繋がる喜びを知る。そして争いの地にも花が咲き、季節も命も「進んで行く」ことに温かさを覚える。
―――音楽はその調べに乗っけて、気持ちを何処かへ旅立たせるメッセージだ。フリーノートは既にデビューを遂げて何枚かのCDやライヴと共に船を漕ぎ始めたバンドだが、僕はこのシングル“ウォークメン”で本当の意味での旅立ちを遂げたと感じた。飛翔感あふれるグルーヴと、まっすぐな視線で明日を見つめる歌が鳴っているからだ。聴くものを何処かへと導く説得力とマジックを鳴らし始めているからだ。
翼なんか生えない 空は飛べない
虹なんか渡れない 時は戻せない
現実はいつだって 厳しいけど
生き抜いて行こう ここは終わりじゃないから
(“ウォークメン”)
サビで泣き叫ぶように歌われるセンテンス。もう、この一発がすべてだ。このリリックを、翼を生やしたメロディーと、空を飛ぶビートと、虹を渡る願いと、時を取り戻したかのようなサウンドのアンサンブルで響かせるのがこの曲の素晴らしさだ。痛みに震え、目を開けることに恐怖を感じていたヴォーカル:秦千香子の表現世界が、「空は飛べない 時は戻せない」とちぎれそうな声で歌い叫ぶことによって、全ての束縛から放たれたかのような自由を手に入れている。サウンドが、歌が、「出来ないことがあってもいい。肯定出来ないことで世界はあふれている。だからこそ、前を見つめて進もう」と生命にエールを送るようなドラマ性を描いている。
以前から心を揺さぶる旋律とハーモニーを描いて来たフリーノートだが、このシングルはバンドの野性味が加わって、音楽としての立体感が増している。細かく刻まれたドラムのリズムと幻聴のようなフィードバックを楽しむギター、そのアンサンブルと秦千香子の切羽詰まった願いを告げるヴォーカル。フリーノートというバンドのスタイルがかっちり出来上がりつつあることを告げる、春の閃光の中に無理矢理飛び込むような一曲だ。