昨日、法人税を払ってきました。
こう見えても、僕、出版社の社長やってるんです。
株式会社FACTの社長さん。
業界内でも「鹿野さんがいる会社って、誰が経営してるんですか?」って、まだ聞かれるし。
こういう機会じゃないと話せないから力説しますけど、FACTは出版コードも雑誌コードも持っていて、広告営業から販売業から倉庫管理まですべて自分たちで手掛けている「7人ぽっち」の会社です。僕を含めてふたりだけがオーバー30な、妙な会社です。どこからも投資も受けずに、頑固に生きている会社なので、こじんまりとしているんですが、でもこの1年間はMUSICAの立ち上げと、自分の想像を遥かに超える成功を今のところこの雑誌が遂げているので、業績が異常にデカくなってしまいました。だから、結果的に自分の物差しでは目が飛び出るほどの額を納めてきました。
実際そうなんだけど、納税というのは会社の体力が計られるもので、うちの会社は今年急成長した結果がリアルに出ているものだったりします。懐から出て行くもので、自分たちの成長を知るなんてことが世の中にあるなんて、今の今まで知らなかったかもしれません。でも経営ってビビるなあ。特にこの季節はビビりまくりでビビデバビデブーですよ、マジで。はぁー。
そんな気持ちがまだ収まらない中、今日は電気グルーヴの取材を果たした後、シロップ16gの解散ライヴを観に、武道館へ向かいました。
僕は「明日という今」に向けてレヴューをしているつもりなので、解散ライヴのレヴューは苦手です。だからしません。ただ――。
終演後、武道館内で軽い挨拶があって、そこで久しぶりに五十嵐と会いました(中畑くんとはVOLA等で会うことがあったので)。
「あぁ、MUSICAの人だあ」と微妙な顔をした後、そこで彼がこう言ったんです。
「レミオロメンの(武道館)ライヴの後、ここで話したこと覚えてますか?」
勿論覚えてた。レミオロメンの挨拶会の時、五十嵐を見つけた僕は「音楽的にはシロップもここでやるべきバンドなんだからさ、きっちり活動して、武道館まで来りゃいいのに」と言ったんです。
そのときの五十嵐はビール顔で「いやいや、最も似合わないバンドじゃないですか、こんなところ」と苦笑いしていたし、本当に絶対にやらない人の顔をしていたんだけど、2008年の3月1日、ライヴ後の挨拶のマイクの前に、彼はいました。
この日のライヴもそう。はっきりいって、音楽、いや、曲以外にたいした魅力があったわけでないバンドが、何故リリースもしないしライヴの本数も少ないながら満員に膨れ上がった武道館で終えることができたのか? シンプルな理由で、半端なく曲がよかったんです。半端なく美しいメロディに、半端なくリアルな文学性に満ちたリリックがあったからです。決して武道館に似合ったバンドじゃなかったかもしれないが、曲自体はどんな野にも咲く花のような美しさを浮かべるのがシロップでした。
ただ、あの時、「冗談じゃない」と苦笑いしていた五十嵐が武道館に立つ時がバンドの終わりの時になるとは、少なくとも僕は予想だにしていませんでした。
あくまでも残念な解散だと今でも思います。本人達にもそう伝えました。すると「ありがとうございます」と3人とも、言っていました。感謝されたくねーよ、こんな言葉で。
五十嵐に「歌わなくても、バンドをしなくても、曲だけは作るのをやめないでくれ。君の曲がこの地に放たれるのか否かは、この国の音楽の価値にかかわることだから」と話しました。そのとき、彼はぐんにゃり立っていた体をまっすぐ伸ばして、「はい」と答えました。それだけを伝えときます。
帰りに焦っていたのか、ぼーっとしていたのか、それともまだ納税を引きずっていたのか、理由はまったくわからないけど、ガソリンスタンドに財布を置き忘れてしまいました。8分後に慌てて戻ったときは、既に財布はなくなってました。
2年ほど前にバルセロナでスラれたことはあったけど、財布を自分でなくしたのは20年以上なかったことで、呆然としてます。
クレジットカードを全部止めたりしながら、昨日から今日まであったことを考えて、財布を失ったことを妙に納得してみたり。でもそんな「税金が納めて、大切なバンドが終わって、だから財布も失いました」なんて、そんな都合の悪い連鎖があるわけもなく、何しろ地に足がついていない僕のここ最近の生き方が表れたんだろうなあ、と抜本的な反省をしないと。
それにしても、明日から大変だ。